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日本の伝統を担う若き職人

20代の頃、海外の文化に憧れ、ドイツで就業先を見つけ働いていました。
暮らしていくうちに海外の文化にも慣れ、日本と海外の互いの文化を客観的に見ることができるようになってきました。そうした中で、「日本って素晴らしいな」という気持ちがだんだんと強くなり、自分のアイデンティティであり、ルーツである上田に戻ろうと決意したんです。そして、海外の文化に触れた経験から日本の文化に携わる仕事をしたいという想いが強くなり、家業を継ぐ決心をしました。

トントンと手織りの温もり

着れば着る程、馴染んでくる……。
手織りならではの風合いの良さがあると思います。手織というのは織る時に、トントンっと一定のピッチで二回打ち込みますが、多少の力の誤差っていうか、ブレがあります。そのブレの部分が手織りならではの味わいにつながるのかなって思っています。やっぱり手織りは、人の手を介すので温もりが伝わるかというか…。手織りならではの伝わる何かがあると思うんです。

長野県の特産と伝統の融合

長野県らしさを表現したくて、12年前ぐらい前から長野県の特産品の林檎に特化した林檎染に取り組んでいます。「林檎」と一口に言っても、いろいろと色合いが出せます。まず、樹皮の分量で濃淡がつけられます。

また、染める時に発色を促すためと、色を固着させるために「媒染(ばいせん)」という工程がありますが、同じ林檎でも、アルミで媒染すると黄色系。鉄で媒染するとグレー系と媒染で色が違ってきます。

その他にも林檎の品種(シナノスイート、秋映、シナノゴールド)によっても色味が違ってくるんです。林檎染でいろんな色が出せるので、それを活かして上田紬の伝統的な柄である縞・格子柄を表現しています。

「上田産」にこだわった上田紬を

将来的には、「上田産にこだわった、上田紬を作っていく」という展望があります。

紬に使う糸作りからやっていきたいと考えています。今は塩尻で、どこか養蚕が出来る土地がないかなと探している段階ですが…。

養蚕から糸作りして、その糸を使ってオール上田産の上田紬を作りたいということは思っていますね。

profile

小岩井 良馬(こいわい りょうま)

小岩井紬工房の3代目。
1975(昭和50)年長野県上田市生まれ。20代の頃はドイツに渡り、現地の日本料理店で働いていた。
2004(平成16)年に帰国後、実家の工房に入る。
2016(平成28)年には伝統工芸士に認定される。